8.再会
 
 ミンナは勇敢な娘です。心に決めたらもうためらいはしません。さっそく、テュービンゲンに立ち戻って、すぐ次の日、老人のもとを再び訪ねました。今度はジークリートも一緒に。
 老人は、はじめ死者を迎えるような厳かな表情をしていました。しかしそれもすぐに、懐かしい子供に会ったような優しい顔に変わりました。戦禍を逃れる途中で、やむを得ずに手放した人形です。
それはもう、失われた息子を取り戻したようなものです。
 老人はしばらく、ジークリートを手で操っていましたが、ミンナにはどうしても動かなかったところに気づくと、ははあとうなずきました。くっくっといたずらそうな笑い方をして席を立つと、道具を取りにいき、バネと糸とで修理をはじめました。
 さあ、これでよし。老人はうなずくと、クララを取りに行き、右手にクララを、左手にジークリートを持って、ごらんとミンナの方を振り向きました。
 ジークリートは、クララを見つめます。人形が互いに相手に手をさしのべます。そのとき、ジークリートの胸が不思議な動き方をして、それはまるで全身で喜びを表現しているように見えました。そうですとも、それはクララと出会うときの、喜びの身震いのためのからくりだったのです。
 ミンナはそのとき、クララの眼もきらっと光ったような気がしました。それを見て、ミンナは、自分の胸の中にも同じからくりがあって、いままさに同じ動き方をしたと思いました。ジークリートとクララの間に通う想いが、自分の心をも動かしているのだと。
 
 さあおいで。ハマン老人は、ミンナを小さな食卓のところに導きます。この食卓を舞台に、記憶の中からひとつの演目をえらび、ひとそろいの人形を見事に扱いはじめました。
 
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