11.稽古
老人はもう、あやつり人形を作ってはいませんでした。相変わらずの手先の器用さを生かして、木片から器やボタンを作っていました。そして、クリスマスの頃には、いくらか華やかな年の市の飾りで歩合を稼ぎ、かろうじて生計を立てていました。
ジークリートとクララは、創作力豊かな若き日の光彩を、ハマン老人に今なお投げかけ、もういちどその眼差しを輝かせているかに見えました。
ミンナは、ジークリートをハマン老人に託して行くことにしました。人も人形も、その最も生きるところに暮らすべきですから。
テュービンゲンの家では、机に向かうミンナをいつも見守ってくれた、あのジークリートの眼差しが懐かしいと思うこともありました。どうしても耐え難いときには、手紙をかきました。ハマン老人に宛てて。また人形たちに宛てて。
もちろん休暇毎に、マールブルクを訪ねました。そうして、ハマン老人から人形の扱いを習いました。はじめは、全てがぎこちなくて何度も投げ出したくなりましたが、やっと、いちどに一体だけはなんとか扱えるようになりました。
ふと気づくと、いつの間にか自分でも上手と思えるほど人形の手足が自然に動いています。まるで、人形たちが自分で動いたかと思うほどです。そんなとき、ハマン老人はただうなずいています。