15.エピローグ
人形はやっぱり人形よ
自分で演じたりはしない ―
そうお考えになりますか。
人形が恋をしたり冒険をしたりするお話。
はじめはそんなうたい文句だったので、
いくらかは期待を持って読み始めたのに、
これはやっぱり魔法の話とは違う。
ただの普通の話じゃあないの ―
そうお考えになりますか。
時と処の隔たりを越え、
心が一つにむすびつくこと、
これはひとつの魔法ではないのでしょうか。
ハマン老人はこう言いませんでしたっけ、
ジークリートとクララの心が、
ミンナと老人とを出会わせてくれたのだと。
引き合わせたのは人形の持つ魔力なのでしょうか
そうかもしれません。
そうでないかもしれません。
ただ言えることは、
かりに人形がそんな力を持っているとしても、
人がそれを信じなければ、
奇蹟はおこりません。
ほら、あなたにそのお心があるからこそ、
わたし、ジークリートの物語るこのお話が、
あなたにも聞こえてくるのではありませんか。
ごらんなさい。
クララがうなずいています。
瞳をしずかに輝かせて。