あとがき
 
 
 このお話を書いていたときには、(もうひとりの)作者の心の中に大きな悲しみがありました。お話は、その悲しみの中から、まるで泉のように湧き出してきました。そうして、(悲しみを除きはしませんでしたが、)悲しみとともに生きてゆく力を与えてくれたようです。
 後書きを書いている今、作者の心には、ひそかな憤りがあります。私たちの生きる普通の世界では、ハマン老人のような境遇が新たに生まれ、周りから蔑まれつづけ、ミンナように精一杯努力するひとが必ずしも報われないことを、あまりによく知っているからかも知れません。世界とはそんなものです。そんなものであることが許せません。
 そんな世界のなかで、お話は何かをなせるのでしょうか。何もなせないのかもしれません。でも、森を守れないからと言ってジークリートは逃げ出しはしませんでした。わたくしも森の奥をめざして歩き出そうと思っています。
 
              2002年秋    著者
 
 
 
 
 
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